オーストリアの大学や専門学校などで勉強するためには、オーストリアで学生ビザを申請する必要があります。現地でさまざまな書類を集める以外に、日本で手に入れなければいけない書類もあります。
今回の記事では、オーストリアの学生ビザの申請方法について、実体験をもとに解説します。申請場所や残高証明でいくら必要なのかなども詳しく解説するため、これからビザを申請する予定の方はぜひ参考にしてください。
オーストリア学生ビザの初回申請場所
オーストリアの学生ビザの初回申請場所はMagistratsabteilung 35、通称MA35と呼ばれる役所のReferat 1.2 – Erstantragszentrumを訪れる必要があります。詳しい住所は下記の通りです。
一番近い最寄り駅はトラムの2番が停まるTraisengasse、もしくはInnstraßeです。地下鉄U6の駅Dresdner Straßeからトラムに乗り換えるか、徒歩で10分程度で行くと良いでしょう。
ちなみに学生ビザの更新は、住んでいる区ごとに決まった役所で申請します。初回と同じ場所ではないため注意しましょう。
オーストリア学生ビザの申請予約
MA35で学生ビザを申請するには、まずオンラインで申請予約をしなければいけません。オンライン申請予約は、学生ビザについての情報が記載されているMA35のページ「Aufenthaltsbewilligung Student」から飛べます。
ページに飛んだら、「Verfahrensablauf」の項目まで行き、「Online-Terminbuchung im Referat 1.2」と記載されている場所をクリックしましょう。予約は約3ヶ月後まで選択できます。時期によって予約が取りづらくなる可能性があるため、なるべく早めに予約することをおすすめします。
なお、学生ビザ更新の際もオンライン予約は必要ですが、場所が変わるのと同様にオンライン予約のサイトも変わります。該当の区を担当している役所のサイトで予約しましょう。
オーストリア学生ビザの申請に必要な書類
オーストリアの学生ビザに必要な書類は10種類あります。実体験をもとに、何の書類が必要か、どうやって取得できるかそれぞれ詳しく解説します。なお、すべて原本とコピーの両方を持参してください。
1.申請用紙
申請用紙(Antragsformular)は、前の項目で紹介したMA35のページの「Erforderliche Unterlagen」の項目からダウンロードできます。どのように記載すればいいのか解説を書いたPDFもあるため、参考にすると良いでしょう。英語の申請用紙と解説もあります。
筆者はドイツ語ができるため、ドイツ語で書きました。記載例を紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。筆者が申請時に記載していない項目は空欄にしています、また4ページ目は省略しました。
オーストリアでは、ボックスへのチェックはいわゆる☑ではなく×で記載しますので注意してください。




①……UniやHochschuleなら「Student」ですが、PrivatschuleやKonservatoriumなら「Schüler」を選択しなければいけません。間違えて記載しても担当者が訂正してくれますので、自分がどちらかわからない場合は「Student」にしておきましょう。
②……もし未成年だったり、配偶者または子どもがいたりする場合は記載が必要な項目です。筆者は独身・子なしのため記載していません。
③……滞在資金について、「資金の種類」はどうやって資金を持ってきているかを問われているので、銀行の普通口座に入っているのであれば「Konto」と書けば問題ありません。「何ユーロ」かは筆者は空欄で出しました。残高証明に記載があるので、書かなくても大丈夫でしょう。
「資金はどこから来ているか」については、筆者は「自身の貯金」と記載しました。もし親に滞在資金を頼っているのであれば、その旨を書きましょう。「親の収入」などで大丈夫です。その場合は、親の名前・誕生日・国籍・関係性も記載してください。
「扶養義務宣誓書」は「Nein」で問題ないでしょう。もし扶養義務宣誓書を用意している場合は、もちろん「Ja」にしてください。
「定期的な出費」については、基本どなたも家賃の支払いが定期的にあるはずですので、ボックスにチェックを入れて「家賃」の欄に月々の家賃の金額を記載しましょう。
続くSchulausbildung und Berufeの書類も記載して提出しましょう。自身の学歴と職歴に関するものです。ドイツ語と英語の両方が記載されているため、今回は省略します。
2.パスポートのコピー
パスポートは顔写真が載っているページだけでなく、記載やスタンプのあるすべてのページを印刷して持っていきましょう。当日はもちろんパスポート原本も持って行ってください。
3.証明写真
4.5㎝×3.5㎝の、6ヶ月以内に撮った証明写真が必要です。日本でも用意できますが、筆者はオーストリアで撮ったものを持っていきました。6ヶ月以内に撮った証明が出来ないな……と思い、筆者は日付の載った部分もすべて持参しましたが特に確認はされませんでした。
オーストリアの証明写真機は比較的大きな駅、もしくはMediamarktなどに置いてあります。こちらで、筆者が利用した証明写真機・Prontophotの設置場所が検索できます。
4.オーストリアの健康保険の書類
オーストリアで健康保険に加入していることが証明できる書類を持参してください。一般的に学生はÖGK(Österreichische Gesundheitskasse)に加入する方がほとんどだと思いますが、加入の際に該当の書類をもらえます。筆者は「Versicherungsnachweis」と「Selbstversicherung in der Krankenversicherung」を提出しました。

ÖGKの加入方法については「オーストリアで学生の健康保険に加入する方法!実体験をもとに解説」の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
5.賃貸契約書
賃貸契約をした際の書類を持っていきましょう。住民登録(Meldezettel)の際にも必要なため大丈夫かと思いますが、万が一ない場合は大家さんに作成してもらってください。
6.家賃証明書
定期的な出費として、家賃が書かれている書類が必要です。通常であれば賃貸契約書に家賃が書いてありますが、念のため銀行口座の送金履歴などをコピーして持参していくと安心です。筆者は残高の証明も兼ねて、申請当日に3ヶ月分の預金通帳を印刷して持参しました。
7.住民登録証
住民登録はオーストリアへ引っ越してから3日以内にしないといけません。住民登録が出来る場所は市内に複数あります。予約は必要ないため、引っ越したらすぐに近くの役所を訪れましょう。
必要書類は申請用紙とパスポート、賃貸契約書です。大家さんのサインが必要なため、忘れず大家さんにお願いしてください。こちらで申請用紙がダウンロードできます。住民登録ができる場所一覧はこちら。住民登録が終わると住民登録証、いわゆるMeldezettelがもらえるため、これを持参します。
8.残高証明書
オーストリアで学生ビザを申請する際には、1年間滞在するのに十分な資金があることを証明しなければなりません。家賃証明書の項目で記載した通り、筆者は申請当日に印刷した3ヶ月分の預金通帳を提出しました。
必要な残高は、年齢や家賃、健康保険料によって変わります。また年度によっても変更があり、年々高くなっています。2025年時点での必要残高は下記の通りです。
24歳以下:703,58ユーロ/月 × 12ヶ月=8,442.96ユーロ
25歳以上:1.273,99ユーロ/月 × 12ヶ月=15,287.88ユーロ
しかし、実は上記の通りに残高を用意しても足りないことがあります。というのも、前述した通り家賃と健康保険料によって月々の出費は変わってくるからです。計算は下記のようにします。
家賃/月 + 保険料/月 = ①
⇒① - 376,27 + 703,58(24歳以下)or 1.273,99(25歳以上)=②
⇒② × 12ヶ月 = 1年間の滞在費用(残高証明で必要な金額)
という計算です。具体的な例を出すと、例えば家賃が500ユーロだったとして、保険料は2025年時点で月に73,48ユーロ。そして24歳以下だったと仮定します。すると
500+73,48=573,48
⇒573,48-376,27+703,58=900.79
⇒900.79×12=10,809.48ユーロ
つまり残高証明で必要なのは10,809.48ということになります。ちなみに途中で出てくる謎の数字の376,27は、住居費の基準枠のこと。家賃が376,27ユーロを超える場合は、その超過分の金額を用意しなければならないという訳です。

まだオーストリアで銀行口座を開いていないという方は、ぜひ「オーストリアで銀行口座を開設しよう!必要書類や手続きの流れを解説」の記事も参考にしてみてください。
9.無犯罪証明書
必要書類のなかで、唯一日本で取らなければいけないのが無犯罪証明書です。無犯罪証明書は警察庁が発行しており、具体的な取得場所は住民登録している都道府県によって変わります。自身で場所や持ち物などを調べて、直接申請に行ってください。交付までにかかる時間は約1~2週間程度です。
無犯罪証明書は、必ずアポスティーユという外務省の証明をもらわないといけません。無犯罪証明書が手に入ったら、外務省へ郵送もしくは窓口で申請してください。だいたい1週間程度で交付されます。
無犯罪証明書は3ヶ月以内に取得したものしか受理されないため、早めに取り過ぎないよう注意しましょう。
実は無犯罪証明書はオーストリアの日本大使館でも取得できます。しかし、発行までに約2ヶ月かかるため、あまりおすすめできません。やむを得ない場合以外は日本で発行すると良いでしょう。
10.大学の入学許可書
大学の入学許可書は、各大学で発行できます。筆者は学校にてInskriptionsbestätigungを発行してもらい提出しました。
オーストリア学生ビザの申請当日レポ
筆者は平日、予約時に空いていた一番早い時間の8時20分の予約を取りました。朝の方が担当者も疲れておらず、機嫌も良いだろうという判断からです(笑)
まずMA35のReferat 1.2を訪れたら、建物に入ってすぐ正面にあるInfoPointで学生ビザの申請に来た旨を伝えて、整理番号をもらいます。その後は、右手にあるEinwanderung Schalterで呼ばれるのを待ちましょう。呼ばれたら、そこでまたアルファベットと番号、階数の書かれたWarteticketをもらえるので、そこに記載されている階まで移動します。
筆者の番号はH006でした。Hの待合室(Wartebereich)はエレベーター降りてすぐ右手の扉を入ったところではなく、左手奥まで行ったところです。

待っていると電光掲示板に自分の番号が出るため、指定された部屋に入りましょう。部屋番号は自分の番号の右側に表示されます。筆者の場合この時点で、MA35に到着してからだいたい40分ほど経っていました。
指定された部屋に入ったら、書類を全部提出します。パスポートの原本も渡します。その際にオリジナルとコピーどちらを渡せばいいか聞いたところ「どちらにしろ返すからどちらでもいいけど、できればコピー」と言われました。
書類を提出し終わると「チェックしたら呼ぶから外で待ってて」と言われたため、また待合室で待機します。実はその前に、過去6ヶ月間どこにいたか記載するリストを書かされたのですが、それは筆者がドイツへ行ったり日本へ行ったり頻繁に移動していたからで、通常はないと思います。
次に呼ばれるときは電光掲示板ではなく、担当の方が直接出てきて名前を呼んでくれます。が、筆者より番号の遅い方は頻繁に呼ばれるのに、筆者はなぜかなかなか呼ばれず……かなりソワソワしてしまいました……!どれだけ遅くても呼ばれるので安心してください。
呼ばれたら手数料が書いた紙を渡され「6階で清算してきて、終わったら今度は待たずにこの部屋に入ってきて」と言われます。6階のKassaで清算して戻りましょう。戻ったらパスポートとビザ受け取りの日付が書かれたEinladungをもらって終了です。
筆者はすべてが終わるまで約2時間半かかりました……。ビザ申請に行く際は時間に余裕を持って行きましょう。ちなみにビザは2週間半くらいで発行されました。ビザ受け取りも、ビザ申請時と同じような流れです。
なお、これは2024年時点での話なので、現在の流れは多少変わっている場合があります。ご了承ください。
オーストリアで学生ビザを取ろう
ビザを取りに役所などに行くのは、たとえドイツ語や英語が堪能でも緊張すると思います。不測の事態を避けるために、事前に必要書類を入念にチェックしておきましょう。

オーストリア在住のお酒大好きなフリーランスの音楽家兼Webライター。お酒以外の趣味は、アニメ、漫画、ゲーム。犬が好き。
名前:MA35 Referat 1.2 – Erstantragszentrum
住所:Dresdner Straße 93, 1200 Wien